退去強制手続きの流れ

退去強制とは、一般には強制送還、国外退去などともいわれます。

外国人を退去強制するためには、法律が定める「退去強制事由」に該当することが必要です。

「退去強制事由」は、入管法24条で細かく定められており、不法入国やオーバーステイなどによりそもそもビザがない人、またビザはあるが刑事犯罪や書類偽造、不法就労、人身売買などに関わった人等を列挙しています。

入国警備官は、退去強制事由に該当すると疑われる外国人がいる場合、独自の違反調査をすることができます。

退去強制事由の詳細についてはこちらをご覧ください。

退去強制手続きが始まるきっかけ

退去強制手続きは、上述のように入国警備官による調査・摘発だけではなく、街中で警察官から職務質問を受けビザがない事が発覚した場合や刑事裁判で懲役刑になった場合などにそこから入国管理局へ身柄が引き渡されスタートすることがあります。

また、ビザがない人が帰国を希望したり、引き続きに日本にいる事を希望して後述する在留特別許可を願い出て入国管理局へ自ら出頭申告した場合に始まります。

入国警備官による違反調査

摘発・出頭いずれによる場合でも、まずはじめに入国警備官による違反調査が行われます。

摘発の前後で直接容疑者本人を取り調べたり、関係する役所や民間団体、関係者などに調査協力を求める事があります。

また、入国警備官が摘発に動く場合、事前に裁判所の許可を得て関係各所を臨検、捜索、関係物を押収することができます。

これらの入国警備官による調査で「容疑なし」となった場合はそのまま在留継続となりますが、「容疑あり」となった場合、主任審査官の判断を仰ぎ「収容令書」の発布を受けて入管の収容施設へ収容されることになります。

退去強制手続き中の収容について

入国警備官による違反調査を経て、収容されることになった場合、収容先はまず地方入国管理局に併設される収容場になります。

収容が長期化する見込みの人については、下記の入国者収容所へ身柄が移されます。

  • 東日本入国管理センター(茨城県牛久市)
  • 西日本入国管理センター(大阪府茨木市)
  • 大村入国管理センター(長崎県大村市)

なお、退去強制手続きに該当すると認められる人については、建前上全員を収容することになっています。

しかし、例外として在宅で調査を受ける「仮放免許可申請」があります。

仮放免許可申請についてはこちらをご覧ください。

入国審査官による違反調査

入国審査官の審査においても容疑者が退去強制事由のいずれかに該当することが間違いないと判断されると退去強制手続きを取られることになります。

認定に服することになれば、「口頭審理」を請求しない旨の文書に署名し、退去強制令書が発布を受けて帰国をすることになります。

違反について事実誤認があったり、違反の事実には間違いがないが帰国を希望しない場合は上級の審査官に再度審理を促す「口頭審理」を請求しなくてはいけません。(間違っても請求しない文書に署名してはいけません)

なお、入国審査官は「口頭審理」の請求ができることを必ず知らせなければいけません。

特別審理官による口頭審理

入国審査官が退去強制事由に該当すると認定した場合、帰国を望まない場合は通知を受けた日から3日以内に、口頭審理をすることを請求できます。

なお、請求は書面によらず口頭でできます。

特別審査官は、入国審査官の認定に誤りがないか確認をします。

特別審査官も同様に退去強制事由に該当すると判定した場合、速やかに容疑者へその旨を通知するとともに、法務大臣へ異議申し立てができることを通知しなければいけません。

ここで容疑者とされる人は判定に服して帰国するか、引き続き日本への在留を希望して法務大臣へ異議を申し立ててるかを選択することになります。

法務大臣に対する異議の申し出

入国警備官、入国審査官、特別審査官による違反調査等を経て、帰国を希望しない人は法務大臣へ異議を申し立てる事になります。

法務大臣へ異議を申し出るには、特別審理官から通知を受けてから3日以内に、法務省令で定める手続きににより、書面を主任審査官に提出して行う事になります。

※法務省令で定める手続きとは、執筆時時点の入管法施行規則42条によると、別記第60号様式による異議申出書とともに不服の理由を示す資料を提出することです

退去強制に該当するという事実認定に誤りがあるとなれば放免となります。

しかし、退去強制事由に該当することは間違いないが日本への在留継続を希望する場合、法務大臣に対しての異議を申し立て、その裁決時に在留特別許可を願い出ることになります。

在留特別許可について

在留特別許可とは、退去強制手続きの中において最後の異議申し立て先である法務大臣の裁決において、法務大臣が異議の申し出には理由がないが、人道上に理由など特別に在留を許可する事情があると考えるときに適法な在留資格を付与することができる制度です。

在留特別許可についてはこちらをご覧ください。

退去強制令書が発布されてしまうと

入国審査官、特別審査官、法務大臣による調査・裁決を経て不服を申し立てなかった場合、また在留特別許可を願い出たが認められなかった場合、退去強制令書が発布されます。

退去強制令書が発布されてしまうと、あとは送還を待つのみですが、まだ送還されていない場合、法律上は規定がないものの実務上の運用でこれまで認められてきた「再審情願」という形で再度、法務大臣に対して在留特別許可の願い出をすることになります。

ただし、再審情願は決められた様式もなく、退去強制令書発布時点以降に新たな事情が発生・判明したなどのよほどの理由がなければまず認められるわけもありません。

また、退去強制令書が発布されて送還される前に裁判所へ「取消訴訟(併せて訴訟中に退去強制されてしまわないように執行停止の申立)」を提起することも考えられますが、残念ながら勝訴するケースは非常に少ないです。

但し、決して事例の多くない「再審情願」、「取消訴訟」でもこれまで認められたケースはあります。

当事務所でできる事

出頭前の準備のご相談、出国命令制度で帰国を考えている方のご相談、仮放免許可申請のご相談、引き続き日本に滞在を希望する方の在留特別許可の見込み、在留特別許可を申し出る際の書類作成と準備のお手伝いいたします。

初回のご相談は無料です。また、当事務所には行政書士法による守秘義務が課せられているためご相談の内容は当然第三者などに他言することはありません。既に収容されてしまっている場合等、特に急を要する案件にも対応させていただきます。まずはお気軽にご相談ください。

 ※裁判所への訴訟手続などは弁護士の独占業務のため、当事務所ではお受けすることはできません。取消訴訟などをお考えの方は最寄りの弁護士会へ入管事件に詳しい弁護士を紹介してもらうか、急を要する場合などは当事務所から信用できる弁護士をご紹介いたします。(紹介料などは不要です)

執筆者

特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
詳細なプロフィールはこちらをご参照ください。

お気軽にご相談ください!

簡単なご相談・費用のお見積りは無料です。些細なことでも分からない事、ご不明な点があれば、お気軽にメール又はお電話にてお問い合わせください。

メール:

下記のお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

電 話:

Tel.03-6273-8219
不在時は担当行政書士 張 正翼 080-7026-9030 までおかけください。

面 談:

面談でのご相談は有償(1時間/5,500円)にて承っております。

当事務所・会議室

面談による相談をご希望のお客様は当事務所(中野)、相談用会議室(東新宿・池袋・浅草橋等)にお越しください。(相談料のみ)

出張相談

お客さまご指定の場所、ご自宅、勤務先、駅前喫茶店・貸会議室等への出張相談も承ります。(相談料(1時間/5,500円)+出張料(往復交通費実費+当事務所から移動30分単位ごとに500円)がかかります)

テレビ会議

通信環境がある方で遠隔地にお住まいの方にはスマホやパソコンを通じてのテレビ会議にも対応します。(相談料(1時間/5,500円)のみ)

ご面談は予約制となっております。詳細は上記メール、又はお電話にてお問合せください。

※お急ぎの場合は有料の面談による相談(1時間/5,500円)、またはメールによる相談(1往復/5,500円)をご利用ください。

【免責事項】
本サイト掲載の記事の内容については誤りがないよう細心の注意を払っておりますが、本サイト掲載の記事に基づきご自身でなされた行為およびその結果については当事務所では責任を負うことはできません。
適切な手続き・処理のためには、当事務所までご相談いただければ幸いです。


    お問い合わせフォーム

    ※「送信」ボタンを押した場合でも、画面に送信完了のメッセージが表示されない可能性があります。
    入力頂いたメールアドレスに自動返信メールが届いていれば受け付けられているため、画面を閉じてご返信までしばらくお待ち下さい。

    関連記事