一般の株式会社であれば、会社の持ち主である株主がいて、その株主で構成される株主総会で選ばれた取締役が従業員とともに日々の業務を遂行します。
小さな会社であれば、株主=取締役であったり、取締役が一人だけのところも多くあるでしょう。
また、大きな会社であれば役員が日々の業務を適正に行っているかチェックをする監査役がいたり、さらに大きな会社ではそれぞれの権限を分権した委員会設置会社等多様な会社がありえます。
民間の活力を生かすことを目的とする一方で、公益性が重視されるNPO法人においては、会社とはまた異なったルールがあります。
ここでは、NPO法人を構成する機関や役職についてご説明します。
NPO法人の意思決定をする構成員
社員
「社員」と聞くと、お給料をもらい会社で働く人をイメージされると思いますが、NPO法上、また定款上に書かれている「社員」とは、NPO法人の構成員のことで、社員は団体の最高意思決定機関である社員(会員)総会での議決権を有します。
一般的には「正会員」と言われます。一方、議決権を持たない会員は「賛助会員」や「サポーター」などという名称で別に呼ばれ、これらの人たちはNPO法上の「社員」ではありません。
株式会社においては株主が法律上の「社員」となりますが、NPO法人の社員との違いは下記の通りです。
NPO法人 | 株式会社 | |
法律上の「社員」の一般的な名称 | 正会員 | 株主 |
利益が出た場合の社員への配当 | 配当を受け取ることはできない。全額を事業に使う | 配当を受け取ることができる |
総会での議決権 | みな平等に一人一票 | 基本的に所有する株の数(出資の割合)で異なる |
法人設立に必要な社員数 | 最低10人以上 | 1人いれば可能 |
意思決定する機関の名称 | 社員(会員)総会 | 株主総会 |
社員による意思決定をするための集まりを、「社員総会」と言います。
社員総会で決める事項は、NPO法人に係る業務全てに渡りますが、あらかじめ定款で理事やその他役員に委任した事項は除きます。
NPO法人は、最低毎年一回、通常社員総会を開かなければなりません。
NPO法人の責任者
役員
役員とは、「社員」による意思決定機関である社員総会で選任され、社員に代わり日ごろの団体の運営の意思決定をする人たちで、後述の「理事」や「監事」のことを総称した名称です。
なお、役員については運営のプロ、運営に慣れている人がなることを想定しており、広く人材を集める事も想定して「社員」(会員)でない人からでも選任できます。
しかし、配偶者や親族の選任については制限があります。
また、破産をして復権していない人は就任できません。
役員が報酬を受けることは可能ですが、報酬を受けることができる役員の数は、役員総数の3分の一以下でなければいけません。勘違いしやすいところですが、「役員報酬」は後述する職員の「給与」とは別個のものです。
役員報酬を支給するNPO法人は現実にはごく少数で、ほとんどのNPO法人の役員は無報酬でやっているのが現状です。
どこの団体でも実際には役員報酬を支給できるだけの余裕があれば、後述の専従の職員に十分な給与を保証するためだと考えられます。
理事
理事は、社員に代わり、日々の業務の執行・決定を行う人たちです。
社員が出席する社員総会において、決議により選ばれます。
設立時においては、社員10人と共に、最低3人の理事が必要です。
全ての理事を社員から選ぶことも可能です。
あらかじめ定款で代表権を有する理事がいる旨の記述があれば、後述する代表権を有する理事を選任できますが、そのような記載がなければ全ての理事が代表権を有することになります。
代表理事
代表理事とは、理事の中で対外的な代表権を有する人を指します。
あらかじめ定款において代表権を有する理事を定める記述があれば、特定の人物を対外的な代表者として選任することができます。
しかし、これまでは例え、定款で代表者がいる旨を定めていても、法務局での登記は理事全員が代表権を有するとされてきました。
そのため、善意の第三者(知らなかった人)に対抗できないため、一人の理事が勝手にその団体を代表して知らなかった人と契約等をすると、それが有効になってしまいました。
この点については、2012年4月からのNPO法改正により、定款で代表者を置くことを定めていれば、登記も1名のみ代表理事を記載でき、対外的にも代表者がいたことを主張できるようになりました。
なお、一般的には代表理事を定めたNPO法人の方が多いのかと思います。
監事
監事は、総会で選ばれた理事が適正に業務を行っているか、財産状況について問題がないかを監査する役割です。
設立時においても最低1人の監事が必要です。
NPO法人で働く人
職員、スタッフ、従業員
NPO法上、職員という言葉は出てきませんが、前述の「社員」との混同を避けるためにここで解説いたします。
NPO法人の多くは、設立当時は皆、無償のボランティア、または非常に少ない給料で活動をスタートするところが多くありますが、団体の活動の規模が大きくなるに連れて、日々の事務をこなすためにアルバイトスタッフ、または専従スタッフを採用することはよくある話です。
これらの人たちは当然、給与を受けることができます。
また、理事は有給職員を兼務できますが、監事は兼務できません。
役員報酬の話と混同しやすい点ですが、理事が職員を兼務して給与を受ける場合、人数に制限はありません。
役員を変更する場合の手続き
役員を変更する場合、法務局への「役員変更登記手続き」を行い、その後、内閣府・都道府県などの管轄官庁への「役員変更等の届出」という二つの手続きが必要になります。
執筆者
- 特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
- 1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
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