2008年10月にアメリカで起きたリーマンショックの余波は日本にも及び、日本は急激な経済不況に陥りました。
その被害を真っ先に受けたのは製造業の工場などで非正規労働者として働く人たちでした。
1990年の入管法改正以降、主にブラジルやペルーなど南米の国々から出稼ぎにやってきた日系人の多くは、製造業の工場で働く人が多くいたため、リーマンショック後には雇用契約の打ち切りや派遣切りによる雇用調整の憂き目に真っ先に遭う人たちが多く出ました。
これに対して、2009年に日本政府(厚生労働省)は失業した日系人に対して、帰国旅費として本人に30万円、扶養家族に対して20万円を帰国旅費として支給する、「帰国支援事業」を実施しました。
帰国支援事業への批判
しかし、帰国支援事業を受ける事の条件は、「今後、日系人としての身分で日本へ再入国しないこと」を誓約させるものでした。
それまで厳しい労働環境の中で廉価で働いてきた多くの日系人に対して、景気が悪化したから帰国させる代わりに手切れ金を渡すような政策であったため、また、入国を制限する法律上の根拠についても身内であるはずの元入管局長などからも疑問視され、多くの非難が浴びせられました。
そのため、厚生労働省は事後になって、「3年後に見直す」旨の声明を出しました。
帰国支援事業を利用した日系人の再入国の現状
しかし、事業から3年がたっても同事業を利用した日系人による入国は認められず、その間に日系人の方がビザの申請をしても、不許可にされてしまっていました。
そのような状況の中、帰国支援事業で帰国した妻である日系人女性を日本に呼び寄せるため、入国管理局に在留資格認定証明書交付申請をしたが、不交付決定の処分をされた夫であるブラジル人男性が2013年5月に国を相手取り、静岡地裁に取消訴訟を提起しました。
訴訟提起後、名古屋入国管理局は手続きに誤りがあったことを認め、すぐに日系人女性の認定証明書を交付しました。
この事件は、「日系人」として入国を希望したのではなく、「日系人の妻」として入国を希望したため、今後も帰国支援事業を利用して南米に帰った人たちでも「日系人の妻」、「その連れ子」などでの入国は認められるものと思われます。
また、この事件後、名古屋入国管理局は「原則3年間は再入国を認めない方針は変わらず、(本件は)個別の判断」と述べ、依然として単に「日系人」として来日することに対しては入国管理局が素直に許可するとは言えない状況でしたが、2013年9月に急きょ内閣府、外務省、法務省、厚生労働省の連名にて帰国支援事業を利用して帰国した日系人でも一定の条件の満たせば再度の入国を認める声明が発表されました。
その条件とは、就労を予定する場合、在外公館におけるビザ申請の際、1年以上の雇用期間のある雇用契約書の写しの提出することとされ、これを文面通り受け取れば、来日よりも前に日本の勤務先である会社と対面もせずに契約を結ぶことを半ば強制するような内容となってしまいます。
当事務所でできる事
上記の通り、帰国事業を受けて帰国した人が再度日本へ来日する場合、「日系人・日本人・永住者等の妻」として来日することについては通常通りの手続きで可能ですが、自分自身が「日系人」であることだけを理由に中・長期滞在目的で入国するには困難が予想されます。
当事務所へご依頼をいただければ、許可の可能性のアドバイスや書類の作成・収集にサポートさせていただきます。
帰国支援事業を利用して母国へ帰国したが、再来日を検討しておりお困りの方は是非、お気軽にご相談ください。
執筆者
- 特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
- 1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
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