医療法人の設立認可申請

個人であっても医師免許があれば医療行為、医業を行うことは可能です。

街中にある小さな診療所などは個人として経営されていることが多いでしょう。

個人で行う診療所や病院も規模が大きくなれば、法人化を検討することお勧めします。

2012年3月末時点において、日本全国には47,825の医療法人があります。

医療法人のメリット

個人が行う診療所や病院の場合、院長にもしもの事があれば経営が立ち行かなくなることもあり得ます。また、売上利益は院長である医師の個人の所得として毎年所得税が課税されることになります。

一方、法人化をすれば、法人税が課税される事になり、個人事業として経営していた時よりも節税になることもあります。

経営面においても社会的な信用度も増し、院長にもしもの事があった場合でも比較的スムーズに運営が進める事もできます。

医療法人制度の趣旨

医療法人制度の趣旨は、医療を提供する体制の確保を図り、国民の健康保持に寄与することにあります。

法人化をすることにより、資金の集積を容易にし、医療機関などの経営に永続性を付与し、その結果として高額医療機器の導入が容易になるなど医療の高度化を図ることができ、地域医療の供給が安定するなどの事項が考えられます。

上記のような趣旨のため、医療法人には地域における医療の重要な担い手としての役割を求められることになります。

医療法人は、積極的な公益性を要求される民法上の公益法人とは区別されますが、剰余金の配当が禁止されているため営利法人とも異なり、利益の追求を求める株式会社ともまた区別されます。

医療法人設立の認可申請先

設立する場所申請先
一つの都道府県内にて開業都道府県知事
複数の都道府県にまたがって開業厚生労働大臣

二種類の医療法人制度

医療法人社団
  • 医療法人社団は、人々の集合体であり、医療法人の多くはこちらの医療法人社団です。
  • 医療法人社団の最高意思決定権者は法律上「社員」といいます。
  • 従業員と混同しやすく紛らわしい点ですが、株式会社における株主に近いものです。
  • 医療法人社団を設立する際は原則として3人以上に社員を決める事が必要です。
  • 医療法人社団設立に際して、預金、不動産、備品などを拠出した人が社員に就任するのが一般的ですが、拠出者でなくても就任できます。
  • 拠出した価額に応じて社員に持ち分を認める医療法人社団が全体の98%です。しかし、社員ごとに持分を認める医療法人社団は平成19年医療法改正により現在は新たな設立ができなくなりました。
  • 従業員として勤務する医師が1名のいわゆる一人医師医療法人が全体の80%と言われています。
  • 昭和60年以前の医療法では3人の医師の勤務が要求されていましたが、現在は医師が1人でも医療法人は認められます。
  • これを「一人医師医療法人」と呼びますが、あくまで勤務する医師の数を意味し、社員や理事が1人でよい訳ではないので混同しないように注意が必要です。
医療法人財団
  • 医療法人財団は、財産の集合体です。
  • 医療法人社団の最高意思決定権者は法律上「評議員」といいます。
  • 評議員は石、歯科医師、薬剤師、看護師、その他の医療従事者、病院等の経営に識見を有する者、医療を受ける者、その他などに限定されます。
  • 評議員は役員を兼務できません。

医療法人の構成

理事3人、監事1人以上を決めなくてはいけません。

さらに、理事の中から1名を代表理事にしなくてはいけません。

理事
  • 理事は医療法人の常務を処理します。
  • 医療法人が診療所等を複数開設する場合は管理者は理事になる必要があります。
理事長
  • 医療法人を代表し、その業務を総理します。
  • 理事の中から一名が選ばなくてはいけません。医師または歯科医師でなくてはいけません。
監事
  • 医療法人の業務、財産状況を監査することを職務とします。
  • また、毎会計年度ごとに監査報告書を作成し、社員総会に提出します。
  • 医療法人の監事は、同じ法人の理事や従業員、理事(理事長を含む)の親族、法人に出資(拠出)している社員、医療法人と取引関係・顧問関係などにある個人や法人の従業員はなる事ができません。

医療法人の名称

医療法人の名称にはルールがあります。

  • 医療法人社団、医療法人財団は必ず表記が必要です。
  • ○○センター、優良○○などの誇大名称は避ける事
  • 国名、都道府県名市区町村名を用いない事
  • 同一又は近隣の都道府県に既存の医療法人の名称と同一又は紛らわしい表記

定款と寄付行為

医療法人の最も基本的なルールは、医療法人社団の場合は「定款」、医療法人財団の場合は「寄付行為」とそれぞれいい、設立前から整備しなくてはいけません。

医療法人の注意点

理事長などの役員個人と法人のお金の区分
  • 理事長などの個人のお金と法人のお金は厳格に区分しましょう。
  • 万が一、必要が生じて理事長などの役員と法人が売買する場合、お金の貸し借りなどをする場合は特別代理人を別途選任して行わなくてはいけません。
  • 個人事業から法人となった場合は特に注意しましょう。
定款への業務の記載
  • 医療法人は定款に規定する業務以外については、例え収益を伴わなくとも行うことができません。
  • このため、設立時から定款の作成は慎重に行いましょう。
  • なお、医療法人は公の施設である診療所などを地方自治体に指定を受けて指定管理者として行うことができますが、指定管理者として公の施設の管理のみを行うことを目的とする法人を設立することはできません。
利益配当の禁止

前述の通り利益剰余金の配当はできないため、すべて積立金として次年度以降の施設改善や従業員待遇の改善に充てることになります。

利益に応じて出資者に配当ができないのであって、日々の業務を行う役員への報酬、従業員への給与支払ができないわけではありません。

設立後の義務

  • 事業報告書の提出
  • 登記手続きと役員変更届の提出
  • 書類の備え付けと閲覧に供する義務
  • 監督官庁により指導監督を受けることになります。

医療法人の法令違反などにより設立認可を取り消すことがあります。

認可申請の手順

  • 定款・寄付行為案の作成
  • 設立総会の開催 設立認可申請書など申請資料の作成準備
  • 申請
  • 審査
  • 認可
  • 設立登記手続
  • 法人成立(登記完了)

申請に必要な書類

医療法人の設立をする場合、他の法人設立に比較して下記の通り膨大な書類の作成・収集が求められます。(下記リストは東京都の場合)

  • 医療法人医療法人設立認可申請書
  • 定款(寄附行為)
  • 設立総会議事録
  • 財産目録
    • 財産目録明細書
    • 不動産鑑定評価書 (不動産を拠出する場合)
    • 減価償却計算書
    • 基金に関する書類(基金制度を採用する場合)
    • 預金残高証明書
    • 負債内訳書
    • 負債説明資料
    • 負債根拠書類
    • 債務引継承認願
  • リース物件一覧表
  • リース契約書(写し)
  • リース引継承認願
  • 役員・社員名簿
  • 履 歴 書
  • 印鑑証明
  • 委任状
  • 役員就任承諾書
  • 管理者就任承諾書
  • 管理者医師免許証(写し)
  • 理事長医師免許証(写し)
  • 理事医師免許証(写し)
  • 医療施設の概要
    • 周辺の概略図
    • 建物平面図
  • 不動産賃貸借契約書(写し)
    • 賃貸借契約引継承認書
    • 土地・建物登記事項証明書 契約の目的物となっている建物等
    • 近傍類似値について(役員就任予定者から物件を賃借する場合のみ添付)
  • 事業計画書(2か年又は3か年)
  • 予 算 書
    • 予算明細書
    • 職員給与費内訳書
  • 実績表(2年分)
  • 確定申告書(2年分)
  • 診療所の開設届の写し

それぞれ作成上の注意点、通数、基準日、作成日、発効からの期限日などがあります。

また、東京都の場合はいつでも申請できるわけではなく、年2回申請を受理していますので、ご注意ください。

当事務所でできること

当事務所では法人化を検討する際のメリットのご説明、法人設立を決意された際の書類作成や収集、監督官庁(都道府県や厚生労働省)への提出や申請受理後の役所との打ち合わせまで代行いたします。

当事務所では報酬として450,000円+実費にて承ります。

お見積りは無料です。また、ご不明な点などがございましたらお気軽にお問い合わせください。

執筆者

特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
詳細なプロフィールはこちらをご参照ください。

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