【8/28更新】新型コロナによる上陸拒否措置の「現在の運用」と「緩和に向けての動向」について

本記事は記事投稿日時点の情報を元に記述しています。
新型コロナウィルス感染症による出入国・在留に関する運用は日々新たに定められたり,急に運用変更がされています。
参考にされる場合は本記事執筆時点と選ん時点で運用が代わっている事を考慮して閲覧ください。

8月28日時点のまとめ

  • 現在,日本は146カ国・地域を上陸拒否対象。解除された国は一つもなし。
  • 8月31日までに再入国許可を得て日本を出国した人に滞在地域・出国時期を問わず9月1日以降に一定の手続きをして再来日可能
  • 9月1日以降に日本を出国する人は事前にネットで届出をし,再入国許可を得て出国をし,現地で検査を受けて再来日可能
  • その他上陸拒否指定後に出国した場合でも人道的な理由等により再入国できる可能性あり
  • 在留資格を問わず「日本人の子」,「日本人の配偶者」は新規入国も可能
  • 往来再開協議の第一陣として協議がまとまった「ベトナム」と「タイ」からは一部の在留資格に限り新規入国可能

非公式未確定情報(報道など)

  • 8月13日報道にて「マレーシア」,8月15日報道にて「シンガポール」についても近日中に協議がまとまり新規入国が可能になる見込み(在留資格は不明だがビジネス優先と予想)
  • その他の国についても往来協議が再開している国もあるが,続報なし
  • 8月22日報道(朝日)にて在留資格「留学」については国を問わず国費留学生を先行して新規入国を認める方針(私費留学生はその後)

原則として159の国・地域からの上陸拒否措置

2月に新型コロナウィルスの感染拡大してから,中国の浙江省を対象に始まった上陸拒否地域の指定について,その後対象国・地域が急速に増やしていき,8月28日にも対象国が加わり,合計で159の国・地域が指定されています。

残念ながら8月28日時点で上陸拒否措置が解除された国・地域は一つもありません。
※但し,後述の通り個別の事情・状況に応じて入国が認めらることがあります。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について(法務省)
http://www.moj.go.jp/content/001318288.pdf

なお,あくまで14日以内に滞在していた国・地域」を基準としており,国籍で区別しているわけではないのでご注意ください。

他,中国の湖北省又は浙江省において発行された中国の旅券を所持する人,旅客船ウエステルダム号に乗船していた外国人も上陸拒否の対象です。

例外として「特段の事情」による再入国の許可

上陸拒否措置を運用開始し始めてから入管は後述の統計を公表しており,そのうち人道上の理由などにより上陸拒否指定地域から来日した者についても「特段の事情」を有するものとして上陸を認めている旨の表示がされていました。

ただし,この「特段の事情」を理由に再入国を認める措置は,(みなし)再入国許可を受けて日本から出国している人が対象であり,新たに日本に来たい人,海外出国中に日本に帰ってこれずに在留期限を経過してしまっている人は別の手続きが必要になります。

4月公表の「特段の事情」に該当する在留資格の公表

当初はどのような人が「特段の事情」に当たるのか不明でしたが,4月に入管法別表2に記載される「永住者」,「日本人の配偶者等」,「永住者の配偶者等」,「定住者」の4つの在留資格,いわゆる身分系の在留資格を有する人については上陸拒否指定される前にその国・地域に入国した人については再入国ができ旨明記されました。(但し上陸拒否指定以前に該当地域に出国した場合に限定されるなど出国日に注意が必要)

さらに,身分系の在留資格ではなく,例えば在留資格「留学」や「技術・人文知識・国際業務」を持っている人であっても現実にその人が日本人の配偶者や子どもである場合は上陸が許可されます。
例えば日本人の配偶者と子どもに許可される在留資格「日本人の配偶者等」を取れる要件を満たしているけど,在職中に結婚して特に転職の予定もないし変更申請が面倒なのでそのままにしている「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザの人,大学の奨学金などの関係であえて在留資格「留学」のままの人などが現実にいたりします。
このような人たちは「特段の事情」を有するものとして初期から再入国が許可されていました。

6月公表の「特段の事情」により再入国が認められる具体例

さらに6月12日には上記に当てはまらない場合でも個別の事情によって再入国を認める事例を公表しましたが,外国での葬儀への参列,外国裁判所からの呼び出しなど限定的な事情に限定されています。

こちらの事例については7月31日付けで事例が追加されて更新されています。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否の措置に関し,個別の事情 に応じて特段の事情があるものとして再入国を許可することのある具体的な事例(法務省)
http://www.moj.go.jp/content/001321919.pdf

8月28日公表の滞在地域・出国時期を問わず再入国許可を持つ者の再入国容認

8月28日の公式発表により,9月1日より現在の滞在地域,日本からの出国時期を問わずに再入国を認める運用を開始する旨の発表がありました。

これにより,例え上陸拒否対象国・地域に指定されたあとに日本からその地域に行った外国籍の人であっても,再入国希望日時点で在留資格,再入国許可期限が有効であれば一定の手続きを経て日本に戻ることが認められます。

9月以降にこれから日本を出国して再入国を希望する人

日本を出国前にインターネットの特設サイトから入国管理局に再入国の予定を申し出て,その申し出が受理されたことが書かれた返信メール(受理書)をもらってから出国をした人について,滞在国を問わず日本へ帰国前に指定の検査証明を取得した人が再入国の対象になります。

ただし,9月1日以降に日本を出国する人が事前に受理書をもらわずに出国すると再入国許可の対象にならないのでご注意ください。

9月1日より前に既に日本を出国して再入国を希望する人

9月1日より前,8月31日以前に日本を出国している人については,滞在地域・出国時期を問わず9月1日に以降に滞在先の日本大使館・領事館で確認を受けて,来日前に指定の診断書(検査証明)を得ることで再入国ができます。

大使館での確認申請と現地での検査

8月31日より前に再入国許可を持って日本を出国した人は現地の日本大使館・領事館で確認申請をして「再入国関連書類提出確認書」をもらいます。

その後,出国する72時間前に医療機関で新型コロナウィルスに感染していないことを確認する指定のフォームの「検査証明」を用意する必要があります。

また,医療機関によって指定の「検査証明」とは違う用紙での診断結果を交付する場合でも記載事項を満たしていれば「検査証明」として任意様式として認められます。

詳しくは各国の日本大使館の案内をご確認ください。

ご参考までに北京にある在中国日本大使館のWebサイトの案内は下記のとおりです。

【在留資格を有する方に対する再入国に関する措置(在中国日本大使館)】

上陸港の制限と空港でのPCR検査

現在は成田,羽田,関空の3空港のみ受入をしており,日本人であっても外国人であっても空港でのPCR検査を求めていますが,上陸拒否措置の緩和を考える場合にもPCR検査を実施できる数の限界もあるため,一挙に増やせないという事情もあります。

入管の統計によるとコロナ以前の2019年8月の外国人だけの入国者数でも月242万人,うち観光(短期滞在)は200万人,再入国者数は32万人なので単純に短期滞在以外を日割り換算して1日4万人の新規入国・再入国があったことになります。
現在の日本の空港での1日のPCR検査実施可能数は報道によると4000件程度に対して,8月には1日1万件程度を目標とするということなので,優先順位をつけざるを得ない状況であり,どのように優先順位が付けられるのか注視が必要です。

(前述の通り日本人についても空港でのPCR検査を求められているため,更に日本人帰国者の数も加味が必要。2020年4月の日本人帰国者数は39万人なので日割り換算1万強,速報値の2020年6月の日本人出国者数は1万人なので日割り換算で約300人)

そもそも新型コロナ感染防止による上陸拒否にならないケース

なお,「日本人」在留資格「特別永住者」を持つ人については当初から上陸拒否指定国・地域から帰国・再入国する場合は上陸拒否措置の対象になりません

入管法上,日本国籍を持たない人は「外国人」として扱われます。

日本国籍と外国籍を持つ「二重国籍の人」は日本人なので上陸拒否されません。

ただし,無国籍の人は外国人として扱われるため上陸拒否の対象になりえます。
(無国籍でも事前に「定住者」などの在留資格を認められている人もいるので,それを理由に日本からの出国日によっては再入国できる可能性はあります。)

日本への帰国・入国が認められても自宅待機要請等

上述の通りそもそも上陸拒否されることがない日本人,特別永住者,「特段の事情」として再入国が認められる「永住者」などの身分系在留資格の人,就労ビザなどでも個別の事情に該当する人が日本へ帰国・再入国できたとしても,入管法とは別に厚生労働省の検疫の手続きとして空港でのPCR検査,自宅などでの14日間待機,自宅まで帰るのに公共の交通機関をしないことへの「協力」が求められます。

なお,公共の交通機関は飛行機の国内線,電車の新幹線,在来線はもちろん,タクシーも含まれるため,空港から自家用車などで帰れない地域に暮らす人が「要請」を遵守しようとすると空港近隣のホテルなどで14日間を過ごすことを求められます。

そのため,帰国に制限がない日本人の人が出張などで海外へ行くと,帰国時にこの要請の対象になるので慎重に検討してください。(さらに,相手国も日本からの入国は認めるが同じように14日間のホテル待機などを求められることがあります。)

水際対策の抜本的強化に関するQ&A令和2年7月1日時点版(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

上陸拒否措置緩和に向けての流れ

7月上旬に措置緩和に向けての公式発表

6月末より報道を通じて様々な未確定情報が小出しにできましたが,7月に入り在留資格認定証明書の交付再開,政府から公式な発表がなされました。

在留資格認定証明書の交付については再開

外国人が新規に日本に来る場合は「在留資格認定証明書交付申請」という申請をすることが原則になります。

新型コロナ発生以降,入管はこの申請を受け付けはすれど,原則として交付決定まではしなかったのですが,6月末頃に交付再開が報じられ,当事務所でも7月上旬に上陸拒否指定されている国に在留する人たちの認定証明書の交付を受けました。

ただし,認定証明書が交付されても,上陸拒否対象国・地域からの来日希望者については,上述の「特段の事情」する人たち,後述の「ベトナム」,「タイ」からの一部の在留資格での来日を希望する人たち以外については依然として原則上陸不可は変わらりません。

上陸拒否措置緩和に関する報道の活発化

6月下旬から外務省の記者会見での上陸拒否解除に向けて検討を始めた旨の発言が報じられて以降,各種報道などで上陸拒否解除に向けての様々な報道が活発になりました。

当初,「高度専門人材,留学生,観光の順で入国を再開していく」,外務省が窓口になって各国政府と協議を再開し「ベトナム,タイ,オーストラリア,ニュージーランドの4カ国と往来再開に向けて協議をする」旨報じられ,7/15時点ではこれらの4カ国とは協議が始まっていた模様だが,8月5日にベトナムとタイのみ往来再開したが,オーストラリア,ニュージーランドについてはその後の続報はなし

また,次いで「中国,韓国,台湾,シンガポール,マレーシアなど10の国・地域との協議開始が予定」されている旨報じられましたが,8月20日時点ではシンガーポールとマレーシアとの往来再開見込みが報じられたのみでその他の国については続報なし。

報道記事などでは「高度専門人材から入国を認めていく」と報じられましたがたその翌日にはおそらく与党に影響力がある農林水産業界からの強い圧力があるのか高度専門人材ではないはずの「技能実習生の入国」についても報じられ,往来再開第一陣のベトナム,タイではやはり技能実習による新規入国も対象となった。

「ベトナム」と「タイ」からの新規入国の再開

政府間の往来再開に向けての会議を受けて,7月末には往来再開の第一弾として「ベトナム」と「タイ」からの新規入国が認められる様になりました。
(同じく往来再開協議を先行して始めていたオーストラリア,ニュージランドについては8/18時点でもその後の続報は報じられていません。)

ただし,「ベトナム」,「タイ」から新規入国ができる在留資格は,

「経営・管理」、「企業内転勤」、「技術・人文知識・国際業務」、「介護」、「高度専門職」、「技能実習」、「特定技能」、「特定活動」(起業)、「特定活動」(EPA看護師・介護福祉士、EPA看護師・介護福祉士候補者)

※「特定活動」(EPA看護師・介護福祉士、EPA看護師・介護福祉士候補者)はベトナムのみ対象

,と非常に限定的です。

これらの国については事前に在留資格認定証明書を申請し,現地で査証申請,新たに誓約書(レジデンストラック)を提出することにより新規の入国が可能になります。

その他報道記事のリンク

以下,ネットニュースへのリンクなので数日経つとリンク切れしているかもしれませんのであしからず。

本記事執筆前の新聞報道によると再入国を認めるとしても4月2日以前に日本を出国した者に制限するなど新たな情報も。

7/13在留資格持つ外国人 再入国規制を段階緩和「4月2日以前出国」が条件8月にも(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61451620T10C20A7PP8000/

また,新規に入国するケースでも個別の事案で査証発給がされ,上陸が許可されているケースもあるようです。
新聞記事は記述が正確でないことが多々あるので信用できませんが,正しい前提で読むとこのケースでは上陸拒否地域に出国し,公表されている既存の特段の事情には該当しないものの事前に法務省にお願いして別の理由で許可をされてものと思われます。

7/11【札幌】FWアンデルソンロペス、ブラジルを出国 入国制限対象で特例認められるかは「五分五分」(スポーツ報知)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8d12d59d72bd0711335ea1a6e2396219e09b3f6リンク切れ

7/12札幌アンデルソン・ロペスに入国許可 11日再来日(日刊スポーツ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b79fb17fbd6b2b2fababeb59212f5a82532be8aeリンク切れ

他,新型コロナでの再入国の問題と本質は異なりますが関連して日本育ちでも日本へ再入国できない人に関する文春さんのいい記事。

7/15日本育ちでも「なぜ帰化しないの?」「日本人じゃないから当然」外国人再入国拒否、当事者への偏見(文春オンライン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/caf0ec561a029c954c54b778c717a074aabfc682

例外となる基準の設定・公表が遅れたことを問題視するのであればよくわかりますが,「批判されてから緩和」,「国籍で判断」という表現は正しくなく,3万人近く死者が出ているフランスと比較されてもなんとも言えないのですが,ニューズウィークの記事。

7/17日本政府のコロナ「鎖国」は在住外国人への露骨な差別では?(ニューズウィークジャパン)
https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2020/07/post-31_1.php

ここにきて入管職員全体の中で初の感染確認とのこと。3月,4月の東京入管の超密状態の最悪な環境で長時間待たされ続けた申請者は当然もう罹っている人がいるのではないかと思いますが。

7/17羽田空港 入管の男性職員 新型コロナに感染(NHK Web)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012521301000.html

NHKの報道のうち「入国制限の緩和めぐる状況」をまとめたコロナ特設サイト

特設サイト新型コロナウィルス入国制限の緩和めぐる状況(NHK)https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/immigration/

外国人留学生の入国、月内にも緩和 再入国は全面解禁へ(朝日)https://www.asahi.com/articles/ASN8P7648N8PUTFK008.html

執筆者

特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
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