国際離婚

日本人と外国人が離婚する場合、日本人同士の離婚と同様の問題や疑問にプラスされて、国際離婚特有の事情も考慮しなければなりません。ここでは広く概要的なご説明をさせていただきます。

■離婚のしかた

日本の離婚は下記の3つの場合によります。これは日本人同士の結婚の場合も、日本人と外国人の国際結婚カップルの場合も同じです。

協議離婚
お互いに離婚に納得している場合に両名により署名された離婚届を市区町村の役所へ提出するだけで成立します。
なお、海外では協議離婚が認められていなかったり、そもそも離婚ができない国もありますので、日本で離婚手続を済ませても、外国では認められないこともあります。
調停離婚
家庭裁判所に申し立て、調停にて離婚を成立させる方法です。
調停離婚は、裁判所が選任した調停委員がそれぞれの言い分を聞き、双方の納得がいく案を提案します。
そのプロセスは非公開で、どちらか一方が提案された案に納得がいかなければ調停は成立しません。
双方が納得して調停成立となると、裁判の判決と同様の効力が生じずるので、外国では調停離婚の成立が、裁判離婚と同様に扱われることもあります。
必要があれば通訳などは裁判所にて用意されます。
裁判離婚
協議離婚、調停離婚も不成立となった場合は裁判にて離婚することになります。
相手が離婚に反対していても、離婚判決が出されると離婚が認められることになります。費用や期間がかかります。また、相手が国外にいる場合はさらに時間がかかると言われます。
必要があれば通訳などは裁判所にて用意されます。

同じ国籍の外国人同士が日本で離婚する場合はその国の離婚法が適用されるので、協議離婚が認められないケースもあり得ます。
違う国籍の外国人同士が日本で離婚する場合は常居所が日本である場合は協議離婚ができます。但し、それぞれの国で協議離婚が認められていない場合は形式的に調停や裁判などをすることになります。

※お互いがもう話し合いの余地なく、完全に対立した状況では、弁護士の担当となる調停離婚・裁判離婚を検討することになりますので、お話をお伺いし、必要があらば適切な弁護士をご紹介いたします。

■日本で離婚をすれば、自動的に外国で婚姻も解消されるのか?

この場合、日本人と外国人の場合は、日本での離婚が成立しても、市区町村の役所が相手方の役所に自動的に通知してくれるわけではないので、こちらでしなければなりません。
日本で離婚が成立すれば、日本人は日本にいる限り、別の人と再婚などをしたりすることも当然できますが、相手の国で離婚がなされていない以上、パートナーだった外国人は再婚することができなかったりする不利益が生じるので、日本での手続後は書類に翻訳を付し、その国の大使館などへ提出する必要があります。

ただし、多くの国では裁判所の関与がない離婚は認められないため、大使館などへ行く前には注意が必要です。

■まだ離婚はしていないが別居している場合

この場合はケース・バイ・ケースで定住者への切替すべきか、配偶者等のままでよい場合もあります。

単身赴任による別居であれば、もちろん変更は不要です。

■離婚後の在留資格はどうなるか?

離婚をするともはや配偶者等の在留資格にはそぐなわなくなるので、日本へ続けて滞在する理由がなくなってしまいますが、日本人から離婚を切り出され、外国人当人は関係修復の努力や意志があれば配偶者等の在留資格での更新が認められたりします。

しかし、別居後、調停も離婚もせずに放置している場合は配偶者等での更新は難しくなります。

また、養育が必要な子どもがいる場合や日本に長年住んでおり、生活の基盤ができている場合などは定住者などへの在留資格へ切替が認められ引き続き滞在することもできます。
さらに現在の職業によってはその他の在留資格、投資・経営、技能、人文知識・国際業務などへの切替が認められる可能性があります。

■離婚をした場合の子どもの親権はどうなるか?養育費は?

どちらが子どもを監護、養育するか、またその費用の負担はどうするかはまず始めにお互いの話し合いにて決めます。ただし、この協議が不調に終わると、裁判所が指定することになります。この場合どちらの親が現実に養育しているか幼い子どもの場合は、母親が親権者として指定される傾向にあります。ただし、父親でも子の養育監護を十分していると認められれば男性にも認められます。

■相手の不貞や暴力なども理由で離婚をするので慰謝料を請求したい。二人で築いてきた財産はどうなるのか?

この場合も同様に、まずは話し合いで協議をして、不調に終わったら調停、訴訟という流れになります。離婚による慰謝料の額はケースバイケースで異なります。
また、慰謝料とは別に、結婚後の婚姻期間中に築いてきた資産(例:土地や家、預貯金など)から負債(土地や家を買った時のローンなど)を引いた金額が対象となり、その額を50%づつ、半分づつ分けることが基本です。こちらも一方に異議があれば調停をし、整わなければ訴訟へ移行します。

■<参考>知らない間に離婚届を提出されてしまった場合

この場合、両者に離婚の意思がなければ離婚は無効なのですが、市区町村役所に無効な離婚届でも一度受理されてしまうと、裁判所に対して無効であることを確認する訴訟を提起しなくてはいけなくなります。

このような時間と費用がかかる事態を避けるために、事前に市区町村役所に離婚届を受理しないようにお願いする書類手続もあります。

■関連業務

勝手に離婚届を提出されるのを防ぎたい
国際離婚によるビザ(在留資格)の切替
国際離婚による子どもの親権
国際離婚による子どもの連れ去り

執筆者

特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
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