日本で暮らす外国人の活動内容が変更した場合
日本で適法に暮らす外国人は皆、それぞれの活動に併せていずれかの在留資格を有しています。
例えば、日本人と結婚している人は在留資格「日本人の配偶者等」、会社で働いている人は在留資格「技術・人文知識・国際業務」、大学、専門学校で勉強する人は在留資格「留学」など、それぞれの活動や身分に応じて在留資格を有しています。
しかし、日本人と結婚していたが離婚をすることになったり、会社で働ていたが起業して自分でビジネスを始めたくなったり、学校を卒業予定で就職先が内定または引き続き就職活動をしたい場合など、日本にいる間に本来の在留の目的と異なることをしたくなることは当然多くあります。
このような場合、その都度自分の国へ一度戻り、新たに日本へ入国するところからやり直すとすると申請する側、入国審査をする入管側にも負担があります。
そこで、入管法では日本にいる間に他の目的の活動を行う在留資格への変更の申請について規定しています。
在留資格変更許可申請とは?
在留資格変更許可申請は,すでに在留資格を得て,日本にいる人が,元の在留活動がしなくなったり,元の在留資格ではできない新しい活動を希望する場合に行う手続きです。
入管法第20条 (在留資格の変更)
在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格(これに伴う在留期間を含む。以下第三項まで及び次条において同じ。)の変更(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまでに係るものに限る。)又は技能実習の在留資格(同表の技能実習の項の下欄第二号イ又はロに係るものに限る。)を有する者については、法務大臣が指定する本邦の公私の機関の変更を含み、特定活動の在留資格を有する者については、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動の変更を含む。)を受けることができる。
2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。ただし、永住者の在留資格への変更を希望する場合は、第二十二条第一項の定めるところによらなければならない。
ここでいう法務省令で定める手続きが、このページで解説する「在留資格変更許可申請」になります。
2項の「ただし~」に書かれている通り、在留資格「永住者」になるための申請は在留資格変更許可申請ではなく、永住許可申請になりますのでご注意ください。
永住許可申請の詳細につきましては下記をご覧ください。
在留資格変更許可申請時の注意点
在留資格変更許可申請時の注意点として,入管法20条3項の記述があります。
入管法第20条第3項
前項(著者注:上記の20条2項のこと)の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。
変更を適当と認める「相当の理由」
在留資格変更許可申請の許可を得るためには、法務大臣が「変更を適当と認めるに足りる相当の理由」があることが必要になります。法務大臣に対して許可するか否かについて広範な裁量があることを示す根拠となっております。
この記述を根拠に,入管法の別表に在留資格ごとに要件が記載される,いわゆる資格該当性に当てはまることが大前提です。
さらに,変更許可申請において法務大臣に広範な裁量が認められることにより,本来であればこれから日本に来日する人に各在留資格ごとに日本へ上陸するための基準が定められた「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年法務省令第十六号)」,いわゆる上陸許可基準省令がすでに日本にいる外国人に対しても原則として当てはめられる理由になっています。
ただし,在留資格変更許可申請時におけるこの上陸許可基準への適合については絶対に満たさないと入管も許可できないわけではなく,どこまで求めるかもまた法務大臣の裁量の範疇になるかと思われます。
また,上陸許可基準への適合性とは別に,この「相当の理由があるとき」を根拠に申請者の在留中の活動履歴や素行などを理由に不許可にされることもあります。
例えば,
- 本来の在留資格で認められた活動を行っていなかったとき
- 本来の在留資格では認められない活動を行っていたとき
- 転職や離婚時の届出を怠ったとき
- 入管法や日本の刑罰法規に違反したとき
,などといった場合は例え上陸許可基準をクリアしていても在留資格の変更が不許可にされる恐れがあります。
ただし,入管も申請する外国人が法令違反などを犯してしまった場合でも一律に変更不許可にしているわけではなく,個々の事情を斟酌して許可・不許可をしているので,マイナスな要素がある場合も原則としてしっかり説明し,申請をすることが基本です。
短期滞在から変更をする「やむを得ない特別の事情」
また、在留資格「短期滞在」からの変更申請については、「やむを得ない特別の事情」が必要になります。
特に、この「やむを得ない特別の事情」については,一時期,入国審査官でも「とりあえずは審査をして許可するための要件」なのか,「審査をする前に受付るための要件」なのか勘違いをしている人が多く散見されました。
現在はそういう審査官はほぼ見ないと思いますが,窓口で入国審査官が「短期滞在からの変更許可申請は受理できない」という場合はそれは誤った説明なので受理はしてもらうようにしましょう。(但し,説明が不足していれば受理されても結局不許可となるのは変わりありません。)
また,申請する側、書類作成・申請代理人である行政書士・弁護士においても「やむを得ない特別の事情」の記述を理解せず,まったく説明せずに申請を出される方がおりますが、必ず書面にて説明をするようにしましょう。
なお,東京入管管轄での運用を例えると,就労審査部門での短期滞在からの就労系の在留資格への変更については原則として許可されず,原則通り在留資格認定証明書交付申請を求められます。(ただし,短期滞在での在留中に認定証明書が交付された場合は基本的に認定証明書を添えての変更許可申請が認められます。)
一方,永住審査部門が管轄する親の扶養を受ける未成年子や日本人の配偶者の短期滞在からの在留資格変更許可申請についてはそのまま受付て審査をしてもらえるケースがほとんどです。(国際人権規約,児童の権利条約などの趣旨が反映されているものと思慮します。)
いずれにせよ,受理をされても審査の段階で「やむを得ない特別の事情」の説明不備で不許可になることも理論的には十分ありえますので,注意をしましょう。
在留資格の変更が許可された時の在留カード
在留資格資格変更許可が許可されると、新たな在留カードが交付されることを定めています。
この場合、新しい在留カードを受けるときに、古い在留カードを提出します。
古い在留カードは穴あけ処理され、新しい在留カードとともに返却してもらえます。
4 法務大臣は、前項の規定による許可をする場合には、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める措置をとるものとする。この場合において、その許可は、それぞれ当該各号に定める在留カード若しくは在留資格証明書の交付又は旅券若しくは在留資格証明書の記載のあつた時に、当該在留カード、在留資格証明書又は旅券に記載された内容をもつて効力を生ずる。
一 当該許可に係る外国人が引き続き中長期在留者に該当し、又は新たに中長期在留者に該当することとなるとき 入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させること。
二 前号に掲げる場合以外の場合において、当該許可に係る外国人が旅券を所持しているとき 入国審査官に、当該旅券に新たな在留資格及び在留期間を記載させること。
三 第一号に掲げる場合以外の場合において、当該許可に係る外国人が旅券を所持していないとき 入国審査官に、当該外国人に対し新たな在留資格及び在留期間を記載した在留資格証明書を交付させ、又は既に交付を受けている在留資格証明書に新たな在留資格及び在留期間を記載させること。
審査期間中の特例と注意点
在留資格変更許可申請は,申請してから結果が出るまでの標準処理期間として1か月から3か月かかるとされています。
そのため,在留期限日直前に在留資格変更許可申請をする必要が生じた場合,審査期間中に在留期限が到来してしまうことも多々あります。
そのような申請者のために,入管は従来から解釈によって合法的に滞在できるものとして運用してきましたが,現在は入管法第20条第5項において,審査期間中に在留期限が来てしまっても,合法的に滞在できる旨の規定を明記しています。
5 第二項の規定による申請があつた場合(三十日以下の在留期間を決定されている者から申請があつた場合を除く。)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる日又は従前の在留期間の満了の日から二月を経過する日のいずれか早い日までの間は、引き続き当該在留資格をもつて本邦に在留することができる。
この規定を「審査中の在留期間の特例」といいます。
この規定が意味を持つのは、例えば、3月31日で在留期限が切れる方が、期限が切れる1週間前、3月24日に在留資格変更許可申請を出したとしましょう。
そうすると申請の審査は原則として1日では出てこないので、実務上は1か月以上はかかります。(複雑な案件はさらに日数がかかることもあります。)
そのため、申請した人は高い確率で3月31日には結果を受け取ることはできず、日本を出国しなければいわゆるオーバーステイとなってしまいます。
このような場合を想定し、本来の在留期限が切れる前に申請した人で本来の在留期限が経過している人でも、入管の審査が継続している場合は在留期限の日から2か月は日本へ適法に在留できることを明文化した規定です。
ただし、この規定の恩恵を受けれるのは31日以上の在留期間を持っている人に限られ、在留期間30日以下の人には適用されません。
(在留期間が30日以下の在留期間を持つ人が在留資格変更許可申請は実運用上は別の取り扱いがされることがありますので、必ず事前に相談されることをお勧めします。)
在留資格変更許可申請に必要な書類
在留資格変更許可申請に必要な書類は下記の入管のWebサイトの通りです。
また,申請書とは別に活動内容に応じて「添付資料」も必要になります。
まとめ
以上の通り,在留資格変更許可申請を考える場合は大まかに次のステップに沿って判断・申請することになります。
- 入管法上の在留資格に該当するか?
- 上陸許可基準省令に適合するか?
- 変更をする相当性に問題はないか?
- 申請書の作成と上記をクリアすることの立証資料の添付
- 入国管理局への申請
- 後日,結果の受取
当事務所でできること
当事務所へご相談いただければ,該当性・適合性・相当性の判断,それらの立証資料の作成や収集のご相談や代行,入国管理局への申請・結果受取まで対応させていただきます。
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また,正式にご依頼をされる前やご自身で書類を作成される際のアドバイスについてもご面談(1時間5,400円)にて承りますのでお気軽にお問合せ下さい。
執筆者
- 特定行政書士、張国際法務行政書士事務所代表
- 1979年(昭和54年)生、東京都渋谷区出身。10代後半は南米のアルゼンチンに単身在住。
帰国後は在住外国人を支援するNPO団体にて通訳・翻訳コーディネーター&スペイン語通訳として勤務。
ビザに限らず広く外国人に関わる相談をライフワークとしています。
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